私たちの話2021 / 03 / 02

はじめまして~東大を休学して長崎に来た話~(インターン体験記 序章)

こちらの記事は、南高愛隣会で長期インターン中をしている大学生の山本さんが、南高愛隣会での様々な職場での体験を通して得た気づき・学びを紹介する「インターン体験記」です。本連載はnoteでも連載中です。

2020年、大学3年生の秋。私は丘の上で、小学生の時以来、10年ぶりに馬に乗っていました。丘のすぐ下に広がる海、そこに浮かぶ山々を見渡せる、気持ちの良い場所です。

私は、3年生に上がるこの春からの1年間、大学を休学しています。北海道と長崎で半年ずつ過ごす生活。東京で生まれ育った私にとって、日本のなかでも特に遠く離れた土地での暮らしは、毎日新鮮なことばかりで胸が躍ります。

休学を決めたのは2年生の秋のこと。
「時間をかけて福祉の現場に入り、障害についての考えを深めたい。」
という願いからです。

東京大学に入学し、法学部へと進学する道を歩んできた私ですが、20歳を迎えたここで少だけ寄り道をすることにしました。

なぜ「障害について」なのか。私の障害への関心は、大学入学後の出会いを通じて大きく深まりました。

私は大学で、「障害者のリアルに迫る」東大ゼミというものに出会いました。毎回の講義で障害当事者や支援者をゲストに迎え、彼らのライフストーリーに耳を傾けます。制度的な「障害者」に限らず、依存症やセクシャルマイノリティなど、様々なテーマを取り上げました。

このゼミを通して出会った方々は、丁寧で、時に鋭い言葉を使って、それぞれの身体感覚や感情を表現してくださいます。「他者」は「自分」とは異なる存在であること。その当たり前の事実と、不思議と生まれる共感を前に、私は気が付くと「他者」の言葉を通じて「自分」の身体感覚や感情を見つめていました。

「障害」について考えることをとても興味深く思った私は、大学1、2年の間、知的障害者を支援する現場を訪れる合宿に何度か参加します。

合宿では、大学の中での再現は難しく感じるような、必ずしも「言葉」を通してではない数日間の出会いがありました。それは私に、「合宿だけでは物足らない、もっと長い時間をかけて出会いたい」という思いを湧き起こしました。

こうして休学を決め、今まで訪れたなかで最も面白いと思った2つの法人、社会福祉法人 ゆうゆう(北海道)と社会福祉法人 南高愛隣会(長崎)で現場に入らせていただくお願いをしました。福祉のことを専門的に学んだことのない私は、半ば直感的に「面白そう」と感じて遠くまで飛び出してきたことになります。

南高愛隣会を初めて訪れたのは大学1年生の夏のこと。「障害者のリアルに迫る」東大ゼミの合宿で訪れました。

知的障害のある方がプロとしてブランドそうめんを作っていたり、愛する人とペア生活をしていたり、罪を犯した障害のある方が地域で暮らしていたり。ここでは、今まで想像したことのない支援が、世界が、「当たり前」として広げられていました。特に罪を犯した障害のある方への支援について知ったとき、私が関心を持っていた「法学」と「障害」が初めて繋がったような気がして、私を期待で膨らませたのだと思います。私が想像する『障害者支援』よりもずっと広がりを持った取り組みがここにあるのではないか、と感じました。

改めてこの半年、南高愛隣会に入り、時間をかけてたくさんの方々に出会っていきます。

私にとってこの休学が寄り道なのか遠回りなのか、はたまた近道になるのか、将来のことを決めていない今はわかりません。それでも、一歩を踏み出して障害について考える出会いを重ね、他者との「異なり」を、「共感」を、肌で覚えたい。それがきっと自分にとって豊かな糧になるだろうと信じて決めました。

この連載では、南高愛隣会でのたくさんの出会いのなかから、ほんの一部でも柔らかく綴ることができたら、と思います。

読んでくださる皆さんと私の拙い文章との出会いが、皆さんと長崎との一つの繋がりとなり、どこかで素敵な出会いやきっかけを生みますように、と、一人の学生ながら感じています。