職員紹介2021 / 02 / 01

「好き」「楽しい」を、感動を産み出す力にしたい。

岩永 洋平さん  「夢」を支える。

どん!どん!どん!

稽古場に迫力のある太鼓の音が鳴り響きます。

障がいのある方たちによるプロの太鼓集団「瑞宝太鼓」。

軽作業や食品や商品製造などといった業態が一般的に多い「就労継続支援A型事業所」としては、全国的にも珍しいエンターテインメント・芸術分野で障がいのある方の活躍の機会を広げる活動です。

その瑞宝太鼓のチームでスキルサポーター(支援員)として、メンバーのサポートをしている岩永 洋平さんにお話を伺うため、練習場を訪れると、「せっかくだから」とメンバーの皆さんが一曲演奏を披露してくれました。

間近で見る和太鼓の演奏は、音だけでなく振動が身体を揺さぶり、迫力満点。真剣な表情で演奏するメンバーの皆さんからは、プロの演奏者としての誇りを感じます。

「障がいがある・ない」ということは一切関係なく、自分たちの好きなこと、夢中になれることに一生懸命に取り組み、見る者の心を揺さぶるパフォーマーたち。そんな印象をメンバーの皆さんから感じることができました。

「希望し、努力し、感謝して生きる」瑞宝太鼓にかける想い。

瑞宝太鼓「息吹(Ibuki)」
新型コロナウイルスの影響で公演活動も制限される中、配信で全国にエールを届けています。

1987年に職業訓練法人長崎能力開発センター(現長崎能開発センター)の和太鼓クラブとして発足した瑞宝太鼓。卒業したクラブ員より「引き続き大好きな和太鼓を続けたい」との希望から、地域サークルとして活動へと広がり、2001年にはプロ集団として独立。現在は長崎県や日本国内に留まらず、海外にも活躍の場を広げ、演奏活動以外にも様々な形での社会貢献活動もされています。

そんな瑞宝太鼓のスタッフとして、メンバーをサポートする岩永さん。

以前は全く異なるの土木建設関連のお仕事をされていたそうで、「自分が福祉の仕事・障がいのある方とは夢にも思っていませんでした」と語られます。

障がいのある方の「夢」を支える、岩永さんの仕事について、お話を伺いました。

■ 「太鼓が好き」その想いで未知の障がい者支援の現場へ。

以前は、地元の雲仙で仕事をしながら、アマチュアの太鼓チームで活動していました。そのチームと瑞宝太鼓が昔から付き合いがあり、時々一緒に活動をしていた縁で、「うちで支援員として働かないか」と誘ってもらったんです。

プロの演奏家という仕事はあるけど、そうではない福祉の領域というところで、好きな太鼓にかかわるというのも面白そうだなと思って、入職を決めました。

全く異なる分野から、障がい者支援の世界に飛び込んだ岩永さん。最初は多くの戸惑いもあったそうです。

元々、一緒に活動することもあったからメンバーの皆さんのことは知っていて、障がいがあるとかも気にしておらず、「太鼓をやっているおじちゃんたち」くらいに思っていました。

ですが、自分が支援員として深く携わるようになると、一人ひとりの障がい特性や、向き不向きみたいなものが分かってきて、どのように練習してもらえばよいかということにも悩みました。思っていた「太鼓のプロ集団」というイメージとは異なることもあり、どのようにかかわればいいか、もどかしさを感じることも多くありました。

■ 「太鼓が好き、楽しい」という想いを、みんなで大切にしたい。

そんな支援の現場で感じた戸惑いも、利用者さん一人ひとりのことを深く知っていく中で、少しずつほどけていったと、岩永さんは振り返ります。

障がいがあるが故の難しさも、もしかしたらあるのかもしれない。でも、そこを意識しすぎずに、「好きな太鼓を楽しむ、楽しんでほしい」というチーム全体の想いを大切にすることで、この仕事を始めた時よりも、よりよい形でメンバーと向き合えているのでは、と岩永さんは感じているそうです。

お金をもらってプロとして演奏をする。そのことは、時にプレッシャーにもなりますが、演奏を通して人に感動をしてもらうことができた時、自分たちも大きな感動を頂ける。

それが演奏・芸術の大きな魅力だと、岩永さんは語ってくれます。

この仕事って、「これができたら完成」みたいな分かりやすいゴールがないと思います。また、太鼓のプロチームもたくさんある中で、瑞宝太鼓が一番技術が高い、という訳でもないと思います。

瑞宝太鼓が目指すのは、「見るだけで楽しいね」とか「見たらエネルギーがもらえた」と言ってもらえるような、人に感動・エネルギーを与える“生きた太鼓”を目指しています。

新型コロナウイルスが落ち着いたら、色々なところに公演に行って、多くの人に見てもらいたいですね!

好きなことに夢中になり、一生懸命努力する。その頑張りが高いパフォーマンスを生み出し、触れる人の心を揺さぶり、感動させる。

「障がいがある・ない」といったことは全く無関係に、そんな芸術・パフォーマンスの存在は、私たちの人生を鮮やかに彩ってくれます。

好きなことに全力で取り組み、たくさんの感動を産み出している演者のすぐ側には、全力で好きなことに挑戦する人たちを支え、応援している人たちがいました。

それぞれの夢に向かって、それぞれの形で努力していく瑞宝太鼓のチームが、これから先も、全国各地に、世界中に感動やエネルギーを届けてくれるはずです。


※「夢」を支える仕事

障がいのある人たちが、自分の夢に向かって一生懸命チャレンジすることを応援します。得意なこと、好きなことを楽しみ、それが生きがいとなったり、誰かの心を動かしていく。そんな取り組みが広がるように、芸術・エンターテインメントの分野でも、障がいのある人たちの挑戦・活躍の機会を広げていきます。