私たちの話2022 / 07 / 11

研修日記 就労支援(コロニーエンタープライズ)

~地域で暮らし、働く~

6月9日、コロニーエンタープライズ研修1日目。

コロニーエンタープライズは雲仙地区「LOCAL STATION LIFE(ローカルステーションライフ)」内の就労継続支援A型、B型の事業所。島原の地場産業・手延べそうめん、ちゃんぽん、うどん、ラーメンを製造している。社員のほとんどは知的障がい者。

最も早い社員で、朝の5時に出勤。就労時間は、1日7、8時間。近くのグループホームに住む社員は、歩きや自転車で、島原や愛野から来る社員は、マイクロバスなどで出勤する。

就労継続支援A型の社員の給料は一般企業と変わらず、最低賃金が適用され、手取りで12、13万。一方で就労継続支援B型は、時給223円で、月に約3万2千円ほど。

A型もB型も週休2日。日曜日と、平日に1日、年間を通して休みの日が固定されている。そのため、社員は、不安やストレスなく、安心して働くことができるという。

A型でもB型でも共通しているのは、作業能力の向上を目指していること。A型では、一般企業での就労を目指し、B型では、A型での就労を目指している社員もいる。また、一つの工場の中に、A型とB型の事業所が混在していることで、相互に連携でき、社員は年齢や能力に合った適材適所の職場で働くことができる。

南高愛隣会が目指すのは、障がい者の「ふつうの場所で、ふつうの暮らし」。

かつて山の中の施設で暮らすことが当たり前だった障がい者が、地域の中で暮らすようになったとき、近隣住民と対立したこともあった。しかし、今では当たり前のように障がい者が地域の中で暮らし、さらにここでは、商品を製造し、利益を得て、給料を受け取っている。職員は、そうした歴史を踏まえ、「障がい者の人生を豊かにすることが、コロニーエンタープライズの使命」だと力を込める。

今後の目標は、今以上に販路を拡大し、地域の方々に認知を広げていくこと。そのためには、「まず職員から地域に溶け込むことが大切」だと語る。 

 

 

今日研修を行ったのは製造した麺の加工現場。

「B型乾燥室」を通り過ぎ、「A型結束室」の横を通り、「B型加工室」と書かれた部屋に入る。

B型加工室の様子

ここは、製造した麺を商品として売るための最終段階。

例えば、麺の選別。束を取り、机にトントン、と長さを合わせたときに出てくる短い麺や、2本にくっついている麺、黒く汚れている麺を取り除く。

次に、麺の袋詰め。シールの「手延べ」が真ん中に来るように、袋に入れる。

そうめんの袋詰め

次に商品名や、原材料名の書かれたシールを貼る。

次に商品を梱包するための箱作り。

作業を進める社員は、「麺や箱の種類によって、梱包する商品の数が異なるため、間違えないように注意している」と話した。

 

 

~そうめん職人の矜持と情熱~

6月17日、コロニーエンタープライズ研修2日目。

今日の研修は、素麺の製造。

製造現場に入る前に、帽子をかぶり、服の埃をとり、手を洗い、最後にアルコール消毒をする。

入口のドアを開けると、すぐ聞こえるのは、ガーッ、という素麺を引き延ばす機械の盛大な音。耳元で話しても相手の声はほとんど聞こえない。

一日に使われる小麦は、平均1トン。

  渦状になった小麦粉

今から、たらいに渦状に移された小麦粉を2本の鋼管(太鼓のばちのようなもの)で8の字に麺を巻き取りながら、機械で細く麺状にしていく。

そして、それを室箱という大きな箱の中に運び、3段重ねで入れ、しばらく置き、熟成させる。

 

最初は、麺状になった小麦粉を1つずつ運んでいたが、途中からその重さに慣れ、2つ運べるようになり、午前中が終わるころには4つ運べるようになった。

しかし、麺状にする機械が7つほどあり、次から次へと急いで運ばなければならない。

社員は機械のある端から端までまんべんなく見渡し、てきぱきと動いている。

 

午後になると、室箱で熟成させた麺を鋼管で、上と下の2層に分け、さらに2メートルほどの長さに引き延ばしていく(手延べ)。

 

上下に分けて延ばすとき、麺と麺が引っかかり、からまり、ちぎれてしまう。そんなとき、社員がそばに寄ってきて、身振り手振りで教えてくれたり、すぐ横で実演してくれたりした。

その姿からはとても障がいがあるように見えず、むしろ矜持と情熱を持って、一つの仕事を極める「職人」だった。

「障がいのある人が働く」ことに対して、これといった根拠もなく、なんとなく懐疑的だった私。

その意識が180度変わった。

手に職を持ち、日々仕事に励む人々の存在を、これからは、以前の私のような人々にこそ知らせていきたい、と強く感じた。